男の子−2




先生はここを乗り切れば育つと言われた。
なんとか自力でお乳を飲めるようになるまで頑張ろうと思っていたが、
日ごとに子犬の状態は悪くなっていった。
泣き声が弱くなり、ぐったりしていく。

病院に行ってから2日目か3日目の夜中だったと思う。
泣くことも出来ず、息をしているのかもわからないくらいだったが
子犬はまだ温かかった。ずっと側についていてやる。
頑張れ、頑張れと心の中で必死に祈っていた。今頑張ったら生きられるからね、と。
しかしその時、ふっとその子の息が止まったのがわかった。
泣きもせず、苦しみもせず本当に静かに旅立っていった。
そっと抱き上げてみる。片手に乗るくらいの小さな体はまだ温かい。
涙がこみあげてきて前が見えなくなった。

結局子犬の命を救うことは出来なかった。
君は少ししか生きられなかったけど、ほかの子が君の分まで頑張って生きるからね
と墓前で手を合わせた。
るりの血統書の名前は「ACE(エース)」。
これはこの男の子につけようと思っていた名前だ。
るり、この子の分もいっぱい遊んで、いっぱい生きようね。

 

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